インバスケット

[昇格試験・幹部試験対策] インバスケットのコツ その3(最終回)

これまで2回に分けてインバスケット試験のコツについて書いてきました。第一回では全般的な取り組み方や勉強方法、第二回では主に優先順位付けのやり方について私なりにつかんだコツについて共有させていただきました。

今回は「インバスケットの本番の試験で意識するポイント」をご説明します。

今まで多くの練習問題に取り組み、また本番の試験を2回受けました。その結果として私なりに体得することができた本番で忘れない方が良いコツについてポイントを共有させていただきたいと思います。

それでは1つずつご説明します。

Contents

インバスケット本番で意識すべき10の視点

リーダーシップを発揮する回答になっているか

昇格試験、幹部試験ということを思い出してみてください。今の仕事より一つ上の仕事の役割を担うための試験です。

このインバスケット試験がそのためにあると考えると、組織を率いるものとしてちゃんとしたリーダーの回答ができているか?ということを見られているということです。

リーダーにはリーダーシップとマネジメントの2つのスキルが求められるのでその両面が見えていることという視点が大切です。

とりあえず上に報告しておけばいいというのはリーダーシップではないので、しっかりリーダーシップをとる姿勢をもった回答になっているかということをぜひ確認してみてください。

支援・協力を求める姿勢が表れているか

一方でリーダーシップを求めるといいつつも絶対的な社長の立場になるわけではありません。

自分がどういったポジションで、どういったリーダーシップが求められているのか、会社の歯車の一つして何が期待役割なのか考えてから取り組んでみてください。

インバスケットのケーススタディでは与えられた役割があるはずです。

店長、支店長、部長、課長、プロジェクトのリーダーなどいずれも中間管理職なはずです。

そういった中間管理職は現場のリーダーであるとともに、大きな組織の中の下層のマネジメントでもあるわけです。

実際の仕事に照らし合わせると、上司に「協力や相談をする」ということはめんどくさいとか意味ないとか、だるいという気持ちになるでしょうか、これはあくまで試験なので、試験対策として割り切って考えて、その主人公になりきって上司にちゃんと報告相談する姿勢を書いた方が無難です。

自分の上司の顔は忘れて「これは試験だ」と割り切った大人な対応が求められますね(笑)

案件の裏にはどんな問題があるか考えているか

20-22の案件の中には問題が明らかにあるものと、一見すると問題が見当たらないただの報告書の体裁のものがあります。特に問題がなさそうな案件については注意深く見るようにしましょう。

何気ない記述の裏には実は大きな問題が隠れていたり、部下からの月報など長い報告書の中に1行とても重要なことが書かれている場合があります。

この点に築いて拾い上げて対応していくことができるか?ということも見られているので評価の対象となります。

例えば月報としては業績の報告だが1行クレームの内容が入っているといったケースが良く見られます。

とてもつまらない案件は一応注意してみておく姿勢をもっておくとよいと思います。

部下や周りの組織を使って最大限効果を上げる視点

最近は下層のマネージャーはプレイイングマネージャーといっていわゆる自分でも実務を行うマネージャーが増えてきています。

また、大きな成功を担当者としておさめたマネージャーは自分でプレイ、ようするに実務をすることが好きでマネジメントをしないマネージャーもいると思います。

これはあくまで試験ですので、現実はいろいろなタイプがいてもいいと思いますが、インバスケット思考を鍛える試験では「周りをどう動かすか?」ということが大切です。

自分が他の案件を実務で動かしていても、部下や別の部署で別の案件が進んでいるように指示をちゃんと出せているか?という視点も重要なので、自分だけではなく、会社全体のリソースをつかってその問題に取り組むような指示が出せているか?というポイントは見られますので意識した方がよいと思います。

リスクをチャンスにするマインドをもつ

これは緊急度が高く重要度が高い問題に関するポイントの一つです。

だいたいは問題に「対処」することは書けると思いますが、それをチャンスとして生かす姿勢はなかなかかけないものです。

ほとんどの人が書かないと思いますが、実はピンチこそチャンスという言葉があるように、マネージャーとしてはそのピンチをホームランに変えるような発想が求められるといえます。

例えばご発注で大量の商品が余ってしまった場合。部下を叱責したり上司に報告したりすれば対処としては済むでしょうか、その大量の商品を捨てるのではなく売ることや他の支店に回すことも考えているか?といった視点も重要になります。

損をおさえるのではなく売上もあげるような施策も考えてみる。そんなマインドを持つと前向きな姿勢が表れた回答が書けると思います。

マニュアルやルールを変える発想もアリ

あなたは組織の長としての対応が求められています。そういう意味ではルールやマニュアルに従うことばかりが仕事ではないということです。

何か問題が発生した場合、部下はただマニュアルに沿って仕事をしただけかもしれません。その場合はそのマニュアルが現実の仕事に合っていないということもありえます。

そういった場合は思い切ってルールの方を変えてみるという考え方もできることを考えてもいいかもしれません。

もちろん権限を超える場合もあるでしょうが、上司はそのマニュアルのことなんか知らないし、問題が起きていることも知りません。課題提起して、現場にあわせたルール作りも提案していく姿勢はあってもいいと思います。

自分がいなくても回る状態をいかにつくるか

だいたいのインバスケットの問題では誰とも「連絡が取れない」「あと90分で指示を出す」といった制限が設けられています。

現実には牢屋にでも入らない限りはこんなことはありませんが、あくまで練習だと考えれば、自分が牢屋にいる間にもその仕事が回るような指示が出せているか?ということが大切になります。

インバスケットの案件の中には「自分が戻ってから対処できる案件」もあります。これを単純に「もどってから対処」とするのか、自分がタッチしない間も何か部下にさせておくのかは一つ違いが生まれる点でもあります。

時間がないときにはとりあえず「もどってから対処、判断保留」ということを書いておくのは白紙にしておくよりはいいですが、もし時間的に余裕がある場合は自分がいないときに調査、報告書作成、部下から上司への代理報告などができないか考えてみると書くことが生まれる場合があります。

仮説立てと検証作業を対応策に入れる

問題が起きたときに「仮説思考」が大切になります。

その問題に対処して終わりというよりは、「未然防止策」「再発防止」まで考えているか?という点は重要な点です。

1つのクレームは氷山の一角というように、その表面化した問題の裏にはたくさんの未発見のリスクがあります。

それが発生しないように根本的なところで手を打てているか?ということがマネージャーとしての重要な役割の一つになりますので、そういったところまで踏み込んで施策を書くといいかもしれません。

悪いヤツがいてもその人の問題としないで仕組みで対応

問題のある部下というのはケーススタディーの中で出てきます。年上のやっかいな部下だったり、元上司が部下にいたり、どうやらパワハラが裏で行われている、コンプラ違反している部下がいるといった人物が登場します。

そういった悪いヤツを叱責すれば済む場合も現実ではあるでしょうが、ここでは意識として「その本人が悪いということにしない」ということが大切です。

「別室に呼び出して叱責する」という対処もいいかもしれませんが、「その行動に出た背景には何があるのか?」といったことまで想像できると良いと思います。

例えばノルマがきつかった、家庭に問題を抱えていたなど裏の問題が見えてくるはずです。

そういった本人に理解を示しつつも、悪いことは悪いこととして対処するソフトとハードの両方の施策が書けていると高得点を得られる可能性があがると思います。

「それは自分がやること?」という視点を常にもつ

自分が全部の案件を処理しないということもできます。

「この程度のことは部下で処理」という指示ができます。

結構インバスケットは時間がないので、部下に一任するという回答をかけば時間を短縮できます。

大切なのは重要な案件の施策を充実させることなので、あまり重要そうではないものについては部下に一任して時間短縮をするというのも意識していい点だと思います。

インバスケットのテクニック的な6つのコツ

ここまではインバスケットに取りくむ上での意識の話がメインでしたが、ちょっとしたコツのようなものを6つ紹介します。

もしよければ全般的なコツについては1回目の記事でも書いてますので、良かったらそちらもみてください。

また、優先順位付けのコツについては第2回目の記事で詳しく書いてますので「なんだか優先順付けがうまくいかない」という方は以下を参照してください。

それでは、テクニック的なコツについて説明します。

最初に報告ルート、組織を確認しよう

試験がはじまったら最初に秘書や直属の部下、副店長などから、そのお店だったり部門の説明資料が「案件1(もしくは案件0)」という形で提供されます。

自分が置かれた立場を確認するうえで必ず目を通すべき最初の資料ですが、特に組織図は確認しましょう。できれば常に手元に置いておいてもいいと思います。

そこで確認した方がいいのは報告ルートです。レポートラインを確認することで、自分の直属の上司は誰か?他の部署に依頼するときに筋を通さないといけないのは誰か?ということを意識することできます。

他部門への依頼の際にも直接どこかの課に依頼することが越権行為になっていないか確認をしてから依頼を出すようにしてください。

根回しは利害関係者の特定が肝

これも報告ルートの確認に似ていますが、根回しをする回答を書く場合はその根回しをする相手の上司や部下を意識した方がよいと思います。

根回しと聞くとネガティブな印象を受ける方もいますが「配慮」と捉えてください。

何か自分の部署で問題があって他の部署に対応を依頼する場合に良く使える対応策だと思いますので、単に「X部門に依頼」とするのではなく「Y部長に事前説明をして根回しも行う」ということも書けていれば視野が広いことが示せると思います。

委任するときは委任者を一人に孤立させない

時短テクニックとして「部下に委任」ということをかく場合があります。

ちょっとリスキーなのは「丸投げ」と捉えられる可能性です。委任することと丸投げは全く意味が違うのでその違いがでるように解答を書いた方が良いと思います。

その時に加える言葉は「報告、連絡、相談」いわゆるホウレンソウです。

「委任はするが、定期的に進捗を聞く会議を儲ける」といったかたちであくまで責任は自分がもっていることをアピールする回答になっていると良いと思います。

情報共有はとりあえず書いておく

書くことが思いつかないとき情報共有は有効です。上司だったり他の部門だったりその情報が必要そうな部署に「情報共有」するということを書いてスペースを埋めるテクニックとして使えます。

自分のところだけで抱えないで情報を社内に展開できているというように見られますので、困ったらとりあえず情報共有を書いておいてもいいかもしれません。

問題発生系の案件は問題点を分解して考えよう

何か問題が発生している案件の場合、その問題を分解してみましょう。Aという問題の背景にはB,C,Dという3つの問題があるような場合があります。

そこを意識できると書くことはたくさん出てきますし、対応策も複数できるので回答が充実します。

前述した未然防止策、再発防止策も合わせるとたくさんの施策が出てきますので、あまりたくさん書いていると時間がなくなるので、「箇条書き」で書くことを意識して「Bの問題→Xする」「Cの問題→Yする」といった形でシンプルに書いていくことをお薦めします。

気配りは安定してポイントを稼げる点

書くことがないときに「情報共有」はとりあえず書けるということをかきましたが「気配り」も同じです。

部下から報告があったとき「ありがとう」「頑張っていることをほめる」といったことをとりあえず書くということで空白が埋められますし、配慮性のポイントが抑えられます。

あまり書くことが思いつかない場合、とりあえず情報共有以外には「気配り」ということも書いておけば空欄にしておくよりは全然いいのでねぎらいの言葉などをとりあえず書いておくというのも有効なテクニックだと思います。

最後に

いかがだったでしょうか。インバスケットのコツシリーズは今回で最終回としたいと思います。

よく「インバスケットは意味がない」という意見も多く、私自身もそう思っていたところがあります。今でもずいぶんと実際の仕事環境とは違うので「インバスケットは使えない」と思います。

ただ、それはそのままインバスケットで想定しているような状況が現実にはないということだけで、実際のビジネス、実際の仕事で使える要素がないということではないと思っています。

また機会があれば、実際の仕事でインバスケットは使えるか?という点についても書いてみたいと思います。

私自身、仕事が終わっても実務で時々インバスケット思考で優先順位付けをして仕事に取り組む場合があるので、そのあたりをまたご紹介できればと思います。

とにかく慣れです。コツについて記事を読んでいただいた後はぜひ、問題集を手に入れて繰り返し練習してみてください!応援してます。

Keiky.

実際に読んだおすすめ書籍