子育て

子供にギブ&テイクの概念を教えるべき? [パパの育児×経営理論] 

勉強したんだからおやつ食べていいシステム。お風呂入ったらビデオ見ていいシステム。こんな報酬制度を家庭で実践している方も多いのではないでしょうか。こういった報酬システムには良し悪しがありますが、程度問題でもありますし、本人が自発的に何かにチャレンジする心を育てるためには大きな問題はないと言われています。

程度を超えてくると、自分を「正当化」するように子供が使ってくることがあります。「~したんだから~して何が悪いのか?」、「なんで~したのに~させてくれないのか」。こういったことを頻繁に言うようになったらちょっと報酬制度を使いすぎている信号だと思って少し減らしていった方が良い場合が多いです。

今回の記事ではそんな「~したら~していい」というギブ&テイクの概念について家庭で使える経営理論から得られるヒントについて書かせていただきます。読んでいただければ報酬制度よりももっと子供に伝えた方が良いことが分かるかもしれません。子育てのヒントになれば幸いです。

Contents

■ ギブ&テイクは平等を目指した考え方

ギブ&テイクという発想は平等を目指している概念と言えます。

どういうことかというと、「~したんだから~をもらって当然」という発想が根本にあります。この考えは「貸し借り」の概念とも通じるものがあり、借りがあるから返さないといけない、貸しがあるからいつか回収する権利があるという発想に基づいているといえます。

この考え方は常にお互い平等であることを目指しているので、どちらかにバランスが崩れているとそれはアンフェアということになります。

損得勘定が根本にあるとしたらそれをどれだけ子供伝えるかというのは悩むところです。自分が損をするのか得をするのかということをどれだけ子供に意識させるのかは難しいところです。というのも、あまりに手元の利益ばかりを追い求めるようになると、「実は損をしているようだけど、あとあと得をするようなことを逃してしまう」という懸念があります。

あまり損得意識ばかりを強調しないようにした方が子育てにおいては良いと思える理論がこれからご紹介する理論なので、ここではギブ&テイクというのはお互いが平等になるように、損得がメインにあると考えていただければ幸いです。

■ 世の中には3つタイプがいる

今回ご紹介する理論では、アダム・グラントというペンシルバニア大学の心理学者の理論です。彼は世の中には3つにタイプがいるというところから話が始まります。それは以下のように分類されます。

テイカー

自分が多めにとる人。全部俺のものというタイプ。自分が損をすることや、人に与えることに抵抗がある人がテイカーということができます。表面的には人に貢献するということを公言しているしている人であっても内心は自分が一番得をしていないと気が済まない人も多いので外側の見た目と内面が異なることも多いのであまりわかりづらいひともいます。

一つ気を付けた方がいいのはテイカーは自分が多めにとっていれば人に与えることに対してはOKである感覚があるので、全く非道な人間であるということではないということは理解してほしい点です。

マッチャー

抹茶ではなく、お互いをマッチさせるということで、冒頭に書いたようにギブ&テイクをしている人のことを指します。とにかく平等にわけることが念頭にあり、損得勘定、もらったら同じだけ返す、貸し借りの理論を大切にしている人です。

冷静に損得を公平に考えるタイプとも言えます。相手が多めにとることを許せず、相手より少なめにとっている人がいたとしたらそれはフェアではないと腹を立てるようなタイプと言えます。

ギバー


3つ目のタイプがギバーです。これは相手に多めにあたえるタイプの人をさします。常に他人に与え続けるお人好しなタイプともいえますが、相手に与えることに対して見返りを求めていないタイプということになります。

相手に何かをしてあげることに対して自分がそれで良いからそうしているというシンプルな思考回路をしているので、それをすることによってどんなメリットが自分にあるのかということまで考えていない利他的なタイプといえます。

■ ギブ&ギブが一番テイクするという事実

このように世の中はギバー、テイカー、マッチャーという3タイプがいるということを前提に考えるとどのタイプが一番良いか?ということが気になると思います。

この理論ではそれぞれどれが良いというわけではなく、それぞれ人生で成功したり充実した人生を生きられる可能性が3タイプ全てであるということで、どれが正しいとかそういったこをは一切言っていません。それぞれのタイプに応じた幸せをつかむというアプローチの違いであって、優劣ではないということになります。

ただし、ギバーが一番とびぬけて成功する可能性を秘めているとグラント教授は著書で説明をしています。

常に相手の立場で考えるギバーが一番成功する可能性があるということです。

これはどういうことかというと、例えばテイカーは上司には従順ですが、部下に対しては支配し搾取する側に回る傾向が強くなってしまう。

一方のギバーは相手が上司でも部下でも誰に対しても与えようとするという働き方になるので最終的にリターンを得られる対象が増えていることになります。

このようにギバーは自分が知らず知らずのうちに人に対してギブすることで信用を貯金しているようなもので、本人が意図していないところで仕込んでいるということが言えるかもしれません。ここで大切なのがギバーはそんなことすら考えていないということでそういったことを考えている時点でその人はギバーではないということになります。

■ ただしギバーは一生テイクできない懸念もある

それじゃあギバーが最強かというとそういうことでもありません。ギバーが常に成功するとは限らないということもあります。

人の手伝いばかりをして自分の仕事は後回しだったり、燃え尽きてしまったり。相手にギブしてばっかりで器用貧乏になって本人は全然成功していないという場合もあります。人助けやボランティアで身を削って自分が全然幸せになれていないようなタイプも当てはまるかもしれません。

そういった人はギブすることで人の役には立っていますが、周りから見て成功しているかというとそうではない場合もあるということになります。

マッチャーとテイカーはそれなりの成功だけ得られますが、ギバーは大きな成功をつかむ可能性がある一方で、

自分への利益の関心が低すぎると一生成功することができなギバーのままなのか、という両方のパターンがあるタイプと言えます。

■ 自分の子供にギブ&テイクの概念をどう教えるか教えないか

このように3タイプがいることと、ギバーが一番成功する可能性を秘めているものの自分の利益を一切考えないと残念な思考になってしまうことについて簡単にまとめさせていただきましたが、子育てをする上で私たちは子供どういった視点でこういったことを教えていくべきかについては悩ましいところです。

あまりに損得勘定をメインに教育をしていくと、確かにフェア精神は身につくと思いますがフェアを超えた人への貢献や無償の愛のような概念というのは育ちにくくなります。

人にやさしくすること、親切にすることを教えたいのにいちいち見返りを求めるような子供になると良いこととは言えません。

困っている人がいたら、自分には特に利益が無くても率先して人を助けたり相談に乗るような人に私は育ってほしいと思っています。かといって自分の利益は度外視してボロボロになるまでそういったことに熱を燃やすのが良いか?といわれると必ずしもそうなってほしいとは思いません。

もっとも経済的、精神的に豊かで幸せに成功している人は、ギバーだということをグラント教授は教えてくれているわけですが、ギバーを子育ての中心としておきつつ、自分の幸せを第一に考えられるような子に育ってほしいと思います。

■ ギブする幸せを主軸としつつ、テイクする時には感謝する心を育てたい

私なりに考えた結論としては、やはりギブする精神というのは小さいころから育てたいと思っています。

何かを誰かにしてあげる喜びは、感謝されることで培うことができます。ポジティブなフィードバックがくると、ありがとうと言われて自分もうれしくなる。こんなやりとりを子供とすることで育てられます。

手伝ってくれてありがとう。いてくれてありがとう。笑顔をありがとう、絵をかいてくれてありがとう。たくさんのありがとうと子供に伝えることで子供の中にギバーとして精神を作っていける手伝いができると思っています。

一方で自分の幸せを満たすことも覚えてもらいたいと思うので、人からテイクすることや、ギブ&テイクを軸にそういったことを教えるのではなく、「自分がどうなったら幸せか、その時相手も幸せか」という「自分軸」を持てるように考えるきっかけを上げたいと考えています。

おやつを上げるとありがとうと言われる。でも自部も一緒に食べたらもっと楽しい。一つお菓子を多めに妹に挙げると喜ばれた、でもパパから一つ多めにもらえて自分もうれしい。そんな「自分も幸せになる」というサイクルをうまくつくってあげて、ギバー貧乏にはならないようにできればと考えて接するようにしています。

そういう意味ではあまりに報酬制度を強く出しすぎるとギブ&テイクの概念が強くなってしまうので避けた方が良いと感じます。宿題やったらテレビを見ていいというのもどうしても使ってしまうものですが、節度をもって使わないとギブ&テイクのウェイトが上がってしまうことにつながります。

■ まとめ

今回はアダム・グラントさんという心理学者の書籍をベースに子供に対して「ギブ&テイク」の概念をどれだけ教えるべきかという点について少し考えてみました。

まとめながら子育て以前に自分はどうかということも考えてしまいました。私はギバーが常に今までの人生で中心にありましたが、テイクすることに遠慮があるというか、自分がもっと幸せになる行動をとってきても良かったと思ったりしています。

長男だったので、妹や弟の利益を優先して自分がじゃんけんで勝手もおやつをあげて自分は食べないといったことをしていたことを思い出しました。損しても自分がそれをしたいという気持ちを優先してきた結果ですが、やはり「自分も幸せになる」という考えをもう少しもつべきだったなと感じる今日この頃です。

世の中バイタリティーがあって成功している経営者にはテイカーが圧倒的に多いですので、そういった人にはなれないと自分では思いますので、このままギバー中心の人生を歩みつつ、もう少し自分の利益を考えるようにすれば大きく成功できる可能性もあるということですので。自分にタイプは大切にしながら生きたいものです。

■ もう少し詳しく知りたい方へ(著者について)

もう少しこの理論を知りたいという方はぜひ書籍を買ってみることをおすすめします。タイミングが合えばメルカリやブックオフでも中古が出回っていると思いますが、新品の本を買ったとして大して高くはないので一度読むことをお勧めします。

ちなみに著者のアダム・グラントさんはペンシルバニア大学の心理学者でとんでもないバケモノのような人です。

彼は1981年生まれで30代後半なのですが、何と35歳という若さでペンシルバニア大学ウォートンスクール教授の最年少終身教授について方です。まさか自分より年下だったとは・・・・。

Google、IBM、Goldman sachsなどの一流企業や組織でコンサルティング活動をする傍ら、彼が書いた「Give and Take: A Revolutionary Approach to Success」という本はは大ヒットして世界的に読まれています(末尾にリンクはっておきます)。

彼は『フォーチュン』誌の「世界でもっとも優秀な40歳以下の教授40人」、『ビジネスウィーク』誌の「Favorite Professors」に選ばれる他、数々の賞を受賞しています(例:アメリカ心理学会Distinguished Scientific賞、カミングスScholarly Achievement賞、オーウェンズScholarly Achievement賞等)

ビジネスに効く本ですが、子育てにも応用できると思って今回紹介させてもらいました。よろしければ是非読んでみてください。

Keiky.