哲学

近代哲学 1/5 全体の流れと登場人物[哲学9]

これまで万物の根源は何か?を主に考えた古代ギリシャ哲学、キリスト教とともに神や人間の生き方のことがテーマだった中世哲学を見てきました。

今回から近代哲学に入っていきます。年代としてはだいたい1500年くらいから1800年くらいの時期にあたる近代哲学はそれこそデカルトやカントなど有名な哲学者たちが多く存在しているので、それぞれの特徴を簡単にみていきたいと思います。

中世まではローマ帝国でキリスト教が広まったころの話だったけど、ここからはルネサンス時代だね。華やかな絵画の印象が強いけどどんなことを哲学していた時代か見ていきましょう!

近代哲学の初回である今回は全体像をまずつかむためにどういったグループの理論があったかということとそれぞれの登場人物についてまとめたいと思います。

Contents

■ 時代背景①ルネサンスのはじまりと宗教改革

ちょうどこの近代哲学が始まるころ、1453年にローマ帝国がオスマントルコの攻撃を受けて敗退します。その時にローマ帝国の学者たちが大量にローマ帝国から亡命して今のイタリアへ逃げていくのですが、それをきっかけにルネサンス時代がはじまることになります。

画家や建築家が大きく活躍し、有名なミケランジェロやボッティチェリ、 レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロなどもこの時代に活躍した画家たちですが、宗教的な面では「宗教改革」をマルチン・ルターが起こしていった時代ともいえます。宗教改革というのはそれまで強い力をもっていたカトリック教会に対する批判からはじまっており、ルターは「贖宥状」という免罪符を販売していて、それを買えばそれまでの罪が赦され死んだ後には天国に行ける証書として売られていたことを批判します。

彼がこのカトリック教会を批判し、カトリック教会からプロテスタントを分離するにいたった一連の動きを宗教改革と呼びます。カトリック教会が腐敗していたことにたいして疑問抱いていたルターのこの動きからプロテスタントが生まれたというのは大きな出来事でした。

■ 時代背景②科学の発展

2つ目の時代背景としては科学技術の発達をあげないわけにはいきません。哲学とは「そもそもの前提を疑うこと」という学問であるということについては最初の方で触れましたが、哲学があったからこそ「色々なことを疑い、検証し、発見する」というプロセスが生まれたといっても過言ではありません。

例えばですが16世紀にコペルニクスはキリスト教が唱えていた天動説とはことなり、地動説を唱えていて地球は世界の中心ではないことを発見していきます。

17世紀のニュートンは有名なリンゴが落ちる事象にもあるように万有引力の法則を発見し引力の存在に目を当てます。ガリレオガリレイは地上に物体が落ちるスピードが同じである落体の法則を発見し、ケプラーは惑星の軌道が楕円形であることを発見します。

このように科学的な発見がドンドン出てきたのがこの近代という時代でした。そんな時代の中、哲学はどういった発展を遂げていったのか、いくつかのグループに分けて考えて理解していくことになります。

■ 近代哲学は4つのカタマリで理解する

デカルト

近代哲学は有名な哲学者もたくさん出てくるので複雑になりがちですが、4つの大きなカタマリに分けて考えると理解がしやすいです。

①大陸合理論:「理性」に注目

最初のカタマリが大陸合理論という一連のトピックスです。フランシスコ・ベーコンは近代哲学の先駆けとなった人です。彼は科学的な実験をすることを何よりも重視した人で、このように何事も科学的に証明することを重視するような考え方の流れはパスカルが継いでいきます。このベーコンとパスカルの流れに対立するのが大陸合理論と呼ばれる考え方です。

大陸合理論は近代哲学の父と呼ばれるデカルトが最も重要な人物で、彼についでスピノザ、ライプニッツの3人を合わせて大陸合理論という哲学の流れがあります。デカルトは後程出てきますが、主観と客観という考え方の根本を生み出した人で、「この世のものはすべて疑えるが私は疑おうにも疑えない存在。だから私にフォーカスをあてて考えよう」というようなことを考えた人です。神や自然ではなく、「人間の理性」にスポットを当てて考える哲学の流れを大陸合理論と呼んでいます。

②イギリス経験論:「経験」に注目

2つ目ノカタマリはイギリス経験論として哲学の流れをくくることができます。人間の理性にスポットを当てた大陸合理論とは異なり、イギリス経験論は「経験」にスポットをあてて考える哲学の流れをさします。

中でも有名なのはロックです。彼は医者でしたが、医者の経験から人間は経験によって形作られているということを考え、彼の考えはバークリーやヒュームという人たちが継いでいくことになります。

③ドイツ概念論:大陸合理論とイギリス経験論の統合

理性に注目する大陸合理論と、経験に注目するイギリス経験論を統合しようとしたのがドイツ概念論という哲学の流れです。

この考え方の大元を作ったのは有名なカントと言われています。彼の流れを継いでフィヒテ、シェリング、ヘーゲルという系統をたどっていきます。弁証法という理論を確立します。弁証法というのはテーゼ(命題)があり、テーゼと矛盾するアンチテーゼ(反命題)を提示してその2つの矛盾を解決するジンテーゼ(統合案)を作るという考え方で、今でもディベートやディスカッションで使っている考え方ですが、この考え方を生んだのがヘーゲルといわれています。

このドイツ概念論をつくったヘーゲルと対立した人物が2人いて、一人はショーペンハウアーという人で、もう一人は共産主義のベースを作ったマルクスという人達でした。

④社会契約論:「国家と民衆」に注目

4つ目のカタマリが社会契約論です。それまで神を利用した宗教戦争や権利闘争がさかんに行われていた中、公権力と民衆の間に改めてルールを契約という形で作るということで国家を成り立たせるということを考えた人たちがいました。中世では王が神からの指示で国を作っていたとされていたわけですが、改めて人間が中心に国家を作り上げるということを考えたとても重要な議論がこの時代に沸き起こりました。

この社会契約論ではホッブスやルソーが主な登場人物です。この2人に加えてイギリス経験論のロックも含まれる場合がありますが、3人とも違う切り口で国家の在り方を唱えていますが、それぞれこの時代の後に続く現代での国家の在り方を考える大きな流れを作るきっかけをつくった人たちであることは間違いなさそうです。

■ さいごに

以上が近代哲学の大まかな流れです。

ルネサンスという時代に突入したこと、科学技術の発達が背景にあったこと、4つの大きなカタマリ(大陸合理論、イギリス経験論、ドイツ概念論、社会契約論)があったという流れで理解するとわかりやすいかもしれません。

哲学をすべて理解するのは難しいですが、全体像をざっくりつかむような薄い内容かもしれませんが、哲学だけを志すわけではありませんのでこれくらいの理解でも十分かと思います。また、このブログでは基礎だけをご紹介していますので、個人的に興味がわいた哲学者だったり、理論があればそれぞれとっても詳しいサイトだったり本があるのでブックオフやメルカリで安く買って読んでみるのもお勧めします。

それではまた次回。