哲学

哲学する前に演繹法と帰納法の2つのアプローチ方法を知っておこう [哲学#2]

哲学の基礎を知っとくシリーズの第二回目ということで、前回はそもそも哲学とはどういったものなのかについて簡単に解説しました。前提を疑って考えてみること自体が哲学であること、哲学的な考え方があったからこそ医療や法律、科学など様々な英知を人類は得ることができたということについて書きました。

今回は第二回目ということで、哲学の具体的な内容に入っていく前に哲学の根本である「前提を疑って考えてみる」ということについて2つのアプローチ、「演繹(えんえき)法と帰納(きのう)法」があるということを最初に振り返ってみたいと思います。

論理的な思考方法として就職活動やディベートでも使いますしプレゼンの流れや言いたいことをまとめるときにも使えるので哲学だけの考え方ではないのですが、これから哲学の基礎に触れていくうえで「この哲学者が言っていることはどっちからのアプローチなのか?」とか「別のアプローチで考えたら同じことがいえるのか?」とか考える時に役に立ちます。

哲学とかに限らず、自分がすごく悩んだりしたときにこの2つの考える順番があることを知っておいて両方使ってみると前よりも考えがまとまることがあるので便利ですよ!

第三回は哲学の歴史を3分で振り返れるような記事になっていますので今回の内容は飛ばしたいという方は次に進んでください。

Contents

■ 演繹法:一般的な原則から結論を導く

演繹法は簡単に言ってしまえば「一般的な原則」をまずは考えて、それに考えていることの結論をもっていくという考え方です。

言葉で説明をしていても何のことだかわからないと思いますので具体的な例を挙げてみたいと思います。

人間はずっと起きていることはできず睡眠が必要だ

あなたは人間である

だからあなたは睡眠が必要だ

こんな感じで世の中の原則を起点として考え始めて、それに対して当て込んでいく感じで考えるのが演繹法という考え方です。

ちなみに「演繹」という言葉を辞書で調べるとこんな意味が書かれています。

 一つの事柄から他の事柄へ押しひろめて述べること。「身近な事象からすべてを演繹する」
 与えられた命題から、論理的形式に頼って推論を重ね、結論を導き出すこと。一般的な理論によって、特殊なものを推論し、説明すること。「三角形の定理から演繹する」

小学館:デジタル大辞泉

次に帰納法についてみていきましょう。

■ 帰納法:個別の事例を集めて結論を導く

先ほどの演繹法(えんえきほう)というのは一般的な原則を最初に考えてそれに対して個別の事象を当てはめていくというアプローチでしたが、この帰納法(きのうほう)は真逆からの考え方をします。

簡単に言ってしまうと、色々ある事例を集めて、「AもBもCもこうなんだからXという結論だ」というような順番で考える考え方です。

先ほどの例でいけばこんな考え方になります。

赤ちゃんも寝る、子供も寝る、若者も寝るし、老人も寝る。男も寝るし、女も寝る。人間はずっと起きていることができないので寝る。

あなたは人間である。

だからあなたも睡眠が必要だ。

このように色々な事例を上げて論拠を固めてから結論を導き出すという考え方が帰納法です。

例えば子供がおもちゃが欲しいといった時に「A君も持っている、Bちゃんももっているから私も欲しい」といってくるのは帰納法です。そういったとき大人は「Cくんは?全員もっているの?」と話して買う必要がないことを説得しようとすることが良くありますが、このやり取りは実はお互いに哲学をしていて、論理的なディベートをしていることに他なりません。

この帰納法は辞書ではこんなことが書かれています。次回から出てくる名前は聞いたことがあるアリストテレスという古代ギリシャ哲学者の名前も登場します。

ギリシア語のepagōgē,ラテン語のinductioに由来するヨーロッパ語(英語のinductionなど)の訳語。もともとは〈上方に導くこと〉を意味したが,現在では,より特殊的な事例からより一般的な法則を導き出すこと,という意味で用いられる。その点で,より一般的な事態からより特殊的な事態を推理(推論)する演繹と対比的に用いられることが多い。人間の推理方法には,この二つの推理,すなわち,一般から特殊を導く演繹的推理と,特殊から一般を導く帰納的推理inductive inference(reasoning)が存在し,しかも,それらが異なる特徴をもつことを指摘したのはアリストテレスであった。

平凡社:世界大百科事典

■ 最後に

ということで今回は哲学的に考えるときの2つのアプローチ方法である「演繹法と帰納法」の違いについて簡単に解説しました。

2つの考え方自体はシンプルですが、演繹も帰納も言葉が難しいですよね。今自分がどっちの考え方のアプローチで考えているのか、はたして演繹法なのか帰納法なのか?ということで悩んでしまいます。

そんなときは「帰納法」については「帰る」という字があるので、「色々な個別の事柄が集結していって結論に帰っていく」ということを考えて「帰っていくから帰納法」と覚えると良いかもしれません。「演繹」の方はそもそも字が難しいですし覚えずらいので、まずは帰納法を起点に考えて、「それとは逆に考えるのが演繹法」という覚え方をしてみてはいかがでしょうか。

それでは次回は第三回目になりますが、第三回目では哲学の歴史について超簡単に全体を知ってみるという記事ですのでよろしければ読んでみてください!