哲学

古代ギリシャ哲学②ソクラテス以前の哲学 [哲学#5]

古代ギリシャ哲学について①②③と3つのパートに分けて理解しようということで、前回の①では古代ギリシャ哲学の流れと主要な登場人物について簡単に触れました。まだ読んでいただいていない方はこの記事を読む前にぜひ一度そちらをご覧ください(こちら

古代ギリシャ哲学はとにかくソクラテス→プラトン→アリストテレスという偉大な3人を軸に考えるということと、古代ギリシャ時代を「ソクラテスの誕生の前後」で分けて理解するとわかりやすいということについて書きました。

今回は「ソクラテスの誕生前」に注目して古代ギリシャ哲学の前半部分について説明していきます。 古代ギリシャ時代は漫画のテルマエ・ロマエの時代で、この時代に哲学が生まれたとされています。時期としては紀元前600年から西暦300年です。ソクラテスが生まれる前ということでいえば前半部分は代替紀元前400年くらいのことと考えていただき、ソクラテスが生まれたあとの時代はそれ以降になります。

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■ 哲学の始まり:タレス(ミレトス学派)

哲学の始まりは古代ギリシャということは説明をしてきましたが、その一番最初はミレトスというギリシャの植民都市だった場所で生まれます。この植民都市で色々なルーツの人たちあつまる中で人との違いや、これまで当たり前だと思っていたことが当たり前ではないということに気付くことで「前提を疑って考える」という哲学の本質が生まれました。

一番最初に「この世の中の源」について考え「それは水である」という理論を導き出したのはタレスという人でした。彼の理論は「生き物が湿り気を必要としている」と考えたことにはじまり、結果として「水」がすべての根源であると主張することにつながりました。

この理論が正しいかどうかは重要ではなく、物事の本質を探究しようとしたことに意味があり、そういう意味では「タレスが初めて哲学した人」といってもいいかもしれません。

のちに彼の弟子だったアナクシマンドロスは、師匠のタレスが「水が万物の根源だとしたら水はどこからきたのか?」ということを考えて「水の根源は無限なもの(アペイロン)」であると説いたといわれています。彼の弟子だったアナクシメネスは「すべてのものの根源は息である」と説いたといわれています。

このように初めて哲学をしたといわれているタレスとその弟子たちは「ミレトス学派」と言われています。哲学の始まりです。

■ 万物の根源は「数である」:ピタゴラス

タレスたちより少し遅れて別のギリシャの植民地(今のイタリア)で誕生したピタゴラスは万物の根源は「数」であると説いた人です。NHKのピタゴラスイッチの名前にもなっていますが、「ピタゴラスの定理」という数学の授業でなった法則を発見した人です。

彼はこの世の中は数によって秩序が成り立っていると考えていて楽器の和音や図形など様々なものは規則性があると考え、世の中は数時の比率(ロゴス)で成り立っていると考えました。

■ 変化か存在か:ヘラクレイトスVSエレア学派

よく体の細胞はすごいスピードで入れ替わっているので何年後かの自分は全く別の自分であるというようなことを言う場合があります。

このように私たちは目に見えていないレベルで変化していて、細かく言えば今の自分と5秒後の自分は全く一緒ではないことになります。こういった「変化」に着目したのがヘラクレイトスでした。

ヘラクレイトスは「万物は流転する」ということを説いた人です。彼はこういった「変化」に着目した人でした。川は同じ川でも流れがあることから同じ川ではないということや、火は燃えているが先ほどとは違う炎になっていることから変化しているという事象をとらえて、このようの中は常に変わり続けながら同じ形を保っているということを考え、すべてのものは流転している(つまり変化している)ということを考えていました。

ところが彼に反対する人たちが出て聞います。この彼の「変化」に着目した見方とは別の見方がエレア地域で生まれます。その地域出身のパルメニデスは「あるものはある、あらぬものはあらぬ」ということを説いて「存在」に着目した人でした。

彼が言いたかったのは川や火はそもそも変化していようがしていまいが、すでにそこに既に存在しているのであって、「変化」は重要ではないということでした。このパルメニデスの考えをさらに発展させたのが弟子のゼノンでした。「アキレスと亀」という話を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、その話を作ったのはゼノンです。これはパラドクス(矛盾)の証明ともいえますが、興味がある人は調べてみてください。ここでは「変化」に注目したヘラクレイトスと、「存在」を重視したパルメニデスという人がいたということくらいで十分です。

■ この世の構成要素を考えた:多元論と原子論

先ほどのヘラクレイトスやパルメニデスは変化や存在からこの世の中を証明しようとしましたが、それとは別のアプローチでこの世の中の構成要素について考えだした人たちがいました。

多元論という主張をした人たちは、この世の中にはたくさんの構成要素があるという人達で、原子論を訴えた人たちはこの世の中の構成要素は最小単位の原子があると考えた人たちでした。ちょっと科学のはじまりような雰囲気を感じないでしょうか。

今ではイタリアのリゾート、もしくはマフィアの印象があるシチリア島で活躍したのがエンペドクレスで、彼は多元論を訴えた人です。

彼はこの世の中は4つの元素(リゾーマタ)からできていてそれは「地・水・火・風」だと唱えました。この4つの元素が「引力としての愛や、反発力としての憎しみ」の力によって分離したり結合することで世の中を作っているといった人です。だいぶ昔のバンドですが、「アースウィンドアンドファイヤー(Earth wind and Fire)」というグループがいたことを思いだす人もいるかもしれません(水のウォーターはないですけど)。

いやいや、この世の中は最小単位の物質でできていると考えたのがデモクリトスという人で、彼は原子論を唱えた人です。この世の中のすべてのものは細分化できない最小単位がアトムというものがあるとした人でした。デモクリトスのほかにもアナクサゴラスという人もいて彼は種子(スペルマータ)という最小単位があってヌースという旋回運動を起こすことで世の中のものが成り立っていると主張しています。

■ さいごに

これで古代ギリシャ哲学の前半、ソクラテスが生まれる前までの時代は終わりです。いかがでしたでしょうか?「万物の根源」について色々なアプローチから説明する人たちがたくさんいたかと思います。

最後に付け加えると彼ら以外にもソフィスト(知恵者)と言われた人たちが登場したのもこの時代でした。このソフィストと言われた人たちはアテネを中心に各地を遍歴しながら「弁論術」を貴族たちに教える人たちがいました。

のちにこのソフィストたちはソクラテスによって否定されるのですが、ソフィストで最も有名だったのがプロタゴラスという人でした。彼は「万物の尺度は人間である」という有名な言葉を残した人でした。

以上が古代ギリシャ哲学の前半部分になります。

後半はいよいよ古代ギリシャ哲学の最も重要なソクラテス→プラトン→アリストテレスという3人の流れが出てきます。

それではまた次回に続きます。