禅語に触れる

「以心伝心」の間違った理解と本当の意味 [禅語]

今日はとても有名な「以心伝心(いしんでんしん)」という言葉について。

この言葉も禅語の一つです。

とても有名な言葉ですが、実は普段使っている言葉の意味ではありません。

私はあの人と以心伝心

この使い方は誤用ということです。

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以心伝心の本当の意味

私たちは以心伝心という言葉について「言わなくても相手に伝わる」という意味で使っていますが、本来この言葉にはそういった意味はありません。

何も言わなくてもカップルだから、夫婦だから、親子だから、日本人同士だからわかりあえる。そんなときに以心伝心という言葉を使っています。

ですが、禅語ではそういった意味ではなく、以下のような意味があります。

以心伝心(いしんでんしん)
  • お互い100%分かり合えることはない。
  • なので、言葉にできないことを心から心へ伝えることが大切。

こんな意味があります。

相手に自分の気持ちを察してもらおう、分かってもらおうとするのが無理な話で、お互い分かりあえないという前提に立った考えを持ちましょうという重要性を教えてくれています。

「お互いわかりあえない前提」って言われてもなんだか寂しい気がするかもしれませんが、むしろこの前提を持つことでとても暖かく優しく周囲に接することができます。

自分は相手のことを100%わかることはできない。

だから相手のことを考える。

相手の気持ちをかんがえて接する。

そうです。たとえ相手が長年付き合った彼氏、彼女だろうが夫婦だろうが子供だろうが相手が本当に考えていることなんかわかるはずがありません。だからこそわかろうとすることがとても尊く、大切なことだということをこの言葉は教えてくれます。

分かり合えない部分をあえて残す

相手のことを100%わかることはできないので寂しがるのではなく、「分かり合えない部分もあえて残しておいている」と考えてみましょう。

相手の新しい一面を発見することができたり、

相手を知ろうとして会話が生まれます。

お互いの違いを面白いことだと考えてもっと相手を好きになりましょう。あなたが好きなものを相手が好きじゃなくても全然いいじゃないですか。お互い分かり合えないけど、だからこそ興味をもって好きになるんです。

相手に多くをもとめてはいけません。

自分のことをなんでわかってくれないの?と思ってもいけません。

相手に迫る前に、自分は相手のことをわかってあげようとしてますか?

「相手のことを分かったつもり」になっていませんか?本当はあなたが思っているようなことを相手は考えていないかもしれませんよ。もっとその人を知ろうとしなくていいんでしょうか。

きっとわからない部分がある方が、関係が長続きします。

長い時間を一緒に過ごしたいと思えます。違いを愛せるようになるはずです。

会社でも以心伝心を大切に

上司や部下やお客さんが言っていることを「阿吽の呼吸で理解できる」ということが以心伝心ではないということはここまでの説明で分かっていただけたと思いますが、会社でも以心伝心の心は使えます。

自分の意見を聞いてくれない。

なんでわかってくれないんだ。

なんであの人は自分勝手でこちらのことを考えてくれないんだ。

こんなことを思い始めたら黄色信号です。以心伝心の誤用のほうに頭が走ってしまっていて「自分のことをわかってほしい」という考えで頭がいっぱいになってしまっています。

もう一度原点に立ち返って、お互い分かり合えないものだということを考えてみてください。その人はあなたのことを分かりません。

そして家族やカップルと異なる点は「そもそもあなたに興味がない」ということです。家族やカップルであればお互い興味がありますが、会社ではたいしてあなたのことを考えていないということです。

そんな人に「なんでわかってくれないんだ」と思うことは本当に無意味なことです。

むしろ、あなたがその人のことをわかろうとしてあげてください。その人の気持ちを考えて接するようにしてください。以心伝心をこちらから実行してみましょう。

大抵のひとはそんな接し方をされても何も感じないかもしれませんが、中には「この人は自分のことを見てくれている」と考えて親しくなれる人、自分への態度を軟化させてくれる人が出てきます。そういう人を大切にしていきましょう。一年後にはとてもいい人たちに囲まれているはずです。

お互い気を使わな関係こそ以心伝心

よく長年連れ添った夫婦はしゃべらなくても相手のことがわかるといいますよね。そしてそれを以心伝心という言葉を使って説明したりするわけですが、私の考えではそれは間違っていると思っています。

お互い仲良く連れ添った夫婦は相手のことがわかるのではなく、「わからない前提をもってお互い気を使わないで暮らしている」というのが正解だと思っています。

最初は相手のことを分かっていると思っていたはずですが、「夫のことなんでわからない、妻のことも全然わからない」ということをいろんな経験を通じて感じるわけです。

そこで相手のことを100%理解することをさっぱりと諦めて、「お互い気を使わない関係をうまく築くことができた夫婦が以心伝心の夫婦」になれたということです。。

「お互い空気のような存在」というのはとても言い得て妙な言葉です。

空気がないと死んでしまいます。つまりその人がいないと死んでしまう。でも空気だから普段意識することはない。とても大切なんだけど、お互い気にしすぎないで自然に暮らすことができる。

そんな夫婦の秘訣も以心伝心という言葉に含まれていると思います。

相手に無理強いしない。

理解してもらえないことに腹を立てない。

お互いわかりあえない前提に立つ。

その上で相手を大切におもってわかろうとする。

そんな姿が私は良い人間関係を作るコツの一つだと思っています。

Keiky.