リーダーシップ

荒川詔四さんに学ぶ:精細な小心者こそが良いリーダーになれるということ[元ブリジストンCEO]

自分はリーダータイプではない。

リーダーになんかなれない。

会社の幹部なんか自分には向かない。

そう思っている人はかなり多いはずです。

「リーダーシップがあるひと」と聞くと、豪胆・豪傑で人付きあいも上手で、指示をして力強く進んでいくリーダーというイメージがあるので、それとは違う自分の性格を振り返って「自分には向いていない」と思うわけです。

リーダーシップの取り方というのはこういったリーダーシップばかりではなくて、以前に記事を書いた「サーバントリーダーシップ型」のリーダー像もあるので決して生まれながらのリーダーもいませんし、リーダーシップが発揮できない人がいるわけでもありません。

今回は荒川詔四(あらかわしょうし)さんのお話です。難しい名前で読み方がわかりませんでした。この方は世界最大のタイヤメーカーであるブリジストンのトップを務めた方で、ご自身の海外経験や、経営企画部門の担当者として上司である社長の下で働いた経験をお持ちの方です。

私自信、自分が繊細、内向的、小心者であるということにコンプレックスがありながら経営企画部門で働いていますので、「あのブリジストンの社長が繊細?小心者?冗談でしょ」と思っていましたが、荒川さんの本をいくつも読んでみると、ご自身としても繊細で小心者だという自覚をもっていらっしゃっていることがわかり、とても共感できる部分が多い経営者の方だと思うようになりました。

今日はそんな荒川さんの書籍「優れたリーダーはみな小心者である」から私が特に響いた言葉をご紹介しながら、繊細で小心者な人でもリーダーになれるんだ!!ということを感じてもらえればと思います。

Contents

なぜ小心者がリーダーに最適か

荒川さんはこの書籍の中でたくさんの体験や、今まであってきたリーダーから感じていること、つまり「良いリーダーはみんな小心者である」ということを教えてくれます。

一流のリーダーがもっている繊細さ。それは常にリスペクトの気持ちを持ち、心配性だから考え抜き、臆病だからリスクに万全の対応をとれること。だからいざというときに意思決定ができる。

(優れたリーダーはみな小心者である | ダイヤモンド社 | 荒川詔四)

こういった特性を持っているリーダーは魅力的です。単に度胸があって豪胆なだけの人にはリーダーは務まりません。

もちろん、荒川さんは単に小心者だけではリーダーは務まらないとしています。ここぞというときには決断が必要ですし、勇気を出して厳しいことを言わなければならないときもあります。

リーダーに大切なのはそういった繊細な神経を束ねて太い神経を作ることだとおっしゃっています。

ちょっと抽象的でわかりにくいかもしれませんが、ようするに小心者だからこそいろいろなことが不安になり検討を重ねたり、準備をすることでドンドンと意思決定をするための土台ができるので、そういったものを積み重ねる努力ができる人が小心者な人だということだと解釈できます。

いざ決断をするときに単に勇気があるだけでは大胆な決断は出来ず、裏には繊細な積み重ねの作業があるということです。

少し不器用でもその人なりの「持ち味」を活かしながら必ずリーダーシップを発揮できるようになるのです

(優れたリーダーはみな小心者である | ダイヤモンド社 | 荒川詔四)

そうなんです。

いわゆる海外ドラマで出てくるようなキレモノ上司がすべてのリーダーシップではないということです。

誰もが自分なりの持ち味を生かしてリーダーシップを発揮できるようになる。そう考えて苦手なことやコンプレックスばかりに目を向けないで、「自分らいリーダーシップって何だろう?」ということを考えていけばいいということです。

ではそんなリーダーが気を付けておくべきことはどんなことでしょうか?

いますでに課長・部長・事業部長・社長などのリーダーについている人にもぜひ意識していただきたい点をご紹介します。

リーダーが必ず気をつけておくべきこと

ここからはこの書籍の中で荒川さんがリーダーになる人が必ず気を付けておくべきことをいくつか押してくれていますのでご紹介します。

私自身もこの言葉を肝に銘じて仕事をするようにしています。

リーダーシップとは相手を無理やり動かすことではない。魅力的なゴールを示して共感を呼ぶこと

(優れたリーダーはみな小心者である | ダイヤモンド社 | 荒川詔四)

相手も人間ですのでプッシュばかりしていては良いリーダーとは言えません。

リーダーは権力を持っているのでみんな従います。ですが「権力を振りかざす」という行為は本当の最終手段として取っておくべきです。

隠しているつもりでも、部下は必ず上司の背後にある「権力という刀」を意識しています。リーダーとしてはうまく部下とフレンドリーに付き合っていると思っていてもそんなことは幻想です。部下が全く権力を意識していないということはありません。

ですのでいかに権力を持っていたとしても、その相手が共感をしてくれるゴールを示して動機付けをして気持ちよく働いてもらうように心がけるべきです。

社長室にふんぞり帰って幹部の心地よい報告だけを聞き、人事権を振りかざして組織を動かしていると勘違いしているリーダーにはなってはいけない。

(優れたリーダーはみな小心者である | ダイヤモンド社 | 荒川詔四)

社長室に限ったことではなく、「自分のデスク」に置き換えてみてください。

自分のデスクにしがみついて気持ちの良い報告だけを聞いて偉そうにしている人はリーダーには不向きということです。

トラブルは順調に起きていると考えること

(優れたリーダーはみな小心者である | ダイヤモンド社 | 荒川詔四)

「なんでこうなったんだ!」

「お前のミスだ!」

「俺がどうやって上に報告すればいいんだ!」

トラブルが起きるときにリーダーはこういったヒステリーを起こしていては二流です。

優れたリーダーは「トラブルは順調に起きている」と考えるいいと荒川さんはおっしゃっています。

つまりおっしゃりたいことは「ものごとが進んでいるから問題がおきる」ということです。

逆に何の問題も起きていなかったら全然進んでいない証拠ということもいえるのでリーダーは危機感を抱く必要があるということも言えます。

トラブルが起きたときはそれをおこした部下や部門を叱責しても何も始まらないので、そのトラブルに真摯に向かって最大限対応する他ないというとても大切な言葉だと思います。

上に上がってくる提案書は「妥協の産物」である

(優れたリーダーはみな小心者である | ダイヤモンド社 | 荒川詔四)

この言葉も非常に響いた言葉なので紹介させてください。

ようするに部門長や社長のところに提案書が上がるころには、最初はとがった提案だったものが、他部門との調整や上司のさらに上司に対する忖度などが重なることで、「角が取れたつまらない提案書」になっているということです。

上司による手直しや忖度が入りまくることで、ポイントがぼやけて、最初にあったキラキラした面白い提案は「誰が聞いても気分を害さない、心地の良いフツーの提案」になりさがってしまうということです。

「なんで現場から上がってくる提案のレベルが低いんだ」

「もっと面白い提案をしてこい」

このように思うリーダーもいると思いますが、あなたがそうさせているか、あなたの部下が現場に対してそういった提案になるように、怒られない提案になるように修正をしている可能性が大きいということを考える必要があるようです。

リーダーに大切な行動とは?

荒川さんは山本五十六の有名な「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という言葉を引用して、企業経営においてもまずはリーダーが自らやってみせることが重要だということを書いています。

やってみせることができなければ人は動きません。リーダーシップの減点はやってみせることにあります。

(優れたリーダーはみな小心者である | ダイヤモンド社 | 荒川詔四)

偉そうに命令をしても部下は動かないということです。

この問いは自分が「やってみせられない」のであればどうすべきか。ということも考える必要性を示してくれています。

自分ができないのであればそのポストにつくべきではないと正論をいってしまえばそれまでですが、「やってみせる姿勢」は少なくとも示す必要があります。

自分の姿勢を示してそれを見て、部下に影響を与えていくのがリーダーがとるべき最も大切な行動といえるでしょう。

意思決定で大切にすべきこと:「3現」

よくメーカーでは「3現主義」という言葉を聞きます。

皆さんの会社でもこの言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。荒川さんもこの書籍の中で以下のようなことをコメントされています。

現地、現物、現実の3現を体感すれば解決策は自然と導き出される

(優れたリーダーはみな小心者である | ダイヤモンド社 | 荒川詔四)

3現というのは現地、現物、現実の3つで、この3つを常に大切にしなさいということです。

例えばリーダーとして何か意思決定をするとき。

経費使うとき、部下の提案を承認するとき、投資をするとき、部下の提案を拒否するとき、上司に説明にいくとき。

こういった何か決めるときに「なんだか違和感がある」とか「なんかフワフワした感じがある」という気持ちになることってありますよね。

しっくりこない感じ。

そういった場合は荒川さんによれば「3現が不足している」ということになります。ちゃんと現地をみているのか。現実的な決断をしようとしているのか。

そういったことが足りない場合は自分の意志決定に自信が持てないということになります。

敵意を持たれることはリーダーの致命傷

小心者のリーダーであればわかっていることがあります。

「自分を傷つける人間が苦手」ということです。

小心者で繊細な人はとにかくごり押ししてくる人が苦手です。自分のパーソナルスペースにガンガンはいってくる上司なんかとても苦手なわけです。

無神経な発言をしてきたり、自分が気にしているコンプレックスについてズバズバ指摘してきたり。それでいて悪びれた感じもなくとても無神経な人。

そんな人が嫌いだったりとても苦手にしているはずです。

人は自尊心を高めてくれる相手を大切に思う一方で、自尊心を傷つける人間に対しては敵意をいだくとされます。

自尊心を傷つけるひとを避けようとします。

ですが上司は避けられません。嫌でも付き合う必要があります。

そうなるとどうなるか。

敵意をもちつつもリーダーには表面的に従うようになります。本音は言わないようになりますし、必要最低限しか付き合わないようになります。

このように敵意を持たれるとリーダーシップは根底からガラガラと崩れます。いわゆる面従腹背(表面的には従っているが腹の中では背く)をうみ、自分は裸の王様になってしまいます。

小心者で繊細な人はこのことをわかっているので自分がされたらいやなことは相手にもしないので、優れたリーダーの素質があるということがいえそうです。

リーダーシップは「楽しい」こと

さいごに荒川さんは「リーダーは楽しいよ」ということも書いてくれています。

自分は内向的、シャイ、繊細、小心者。

そうかもしれないけど、それがリーダーになれないということではないということをおっしゃっています。

リーダーになるということは人生が楽しくなることにつながるそうです。

みんなが共感する理想を掲げて、みんなで知恵を絞って一緒に汗をかいて結果をだす。

そんな経験ができるのもリーダーになる魅力だということです。

自分らしさを発揮しながら良いリーダーになっていきたいですね。

最近出版された荒川さんのこちらの本もおすすめです(また記事にする予定です)。

こちらの本は経営企画部門で働く方や、管理部門の方に向いている本で、「リーダーを支える優秀な部下の特徴」はどういった特徴を持った人か?といったことがわかる本です。ぜひ読んでみてください。