哲学

中世哲学 1/2 全体の流れと主な哲学者たち [哲学#7]

ここまで哲学とはどんな学問か、私たちの生活にどんな重要な影響を与えているかということからはじまり、古代ギリシャ哲学について3回に分けてざっくりと基礎的なことを書いてきました。

今回は中世に入っていきます!このあとは近代と現代に続く全部で4つの時代に分かれているので2つ目の時代ということになります。

古代ギリシャ哲学は万物の根源は何か?とか人間はどんな生き方が理想か?ということを考えていた時代だけど、中世哲学はとにかく「キリスト教」とのつながりが深いよ。

古代ギリシャ哲学に続く中世哲学はキリスト教との関係が非常に深くて、「神」の存在や「キリスト教の教え」と密接だといういことだけでも覚えておくと理解がしやすい時代の哲学と言えます。

それでは初回なので簡単に中世哲学の流れと主な登場人物についてサラッと上げてみたいと思います。

Contents

■ 中世哲学=ローマ帝国×キリスト教

時代としては4世紀末から15世紀ごろまでを中世と呼んでいます。西暦でいえば300年頃から1500頃までのかなり長い時代を中世と私たちは読んでいます。大きな歴史的な流れでいえばマケドニアを倒したローマ帝国が分裂し、15世紀に東ローマ帝国が滅亡したくらいまでの時代です。この時代の次にはルネサンス時代が来ることになります。

それまでは古代ギリシャでの哲学が発展してきていたわけですが、中世はローマ帝国とともにあった時代といえます。

ローマ帝国はキリスト教を国の宗教として定めるわけですが、ローマ帝国の勢いとともにキリスト教が各地に広がり、その教えや神という存在について哲学することが多く、この時代の哲学はローマ帝国の影響なしでは語れない時代ということもできます。

ですので中世はキリスト教、ローマ帝国という大きな背景があったということだけでも覚えておくとわかりやすいかもしれません。この時代の哲学は宗教チックな感じがありますので。

この中世はとても長いので3つに分けて考えます。

■ 初期:教父哲学とアウグスティヌス

紀元前後(つまりキリストの誕生)から12世紀くらいまでの長い時代を中世の初期としてくくって考えます。

キリスト教の誕生

この時代は何と言ってもイエス・キリストの誕生とともにあります。今のパレスチナにあるナザレに生まれたイエスは神により無償の愛を説き最後は処刑されてしまいます。イエスはユダヤ教の「旧約聖書」では神(ヤハウェ)との契約と裁きによる宗教は貧しい人が実行できないことに疑問を感じ、神からの無償の愛(アガペー)があって分け隔てなく人類を救ってくれるということを教えました。ユダヤ教からすると危険な異端ということになります。

彼が死んだあと、彼は神の子供であり、これから来る世界の終わりに復活するということを信じる宗教がキリスト教として生まれました。パウロとい人物が布教をするわけですが、新約聖書とともに徐々に広がり、最終的には380年位にローマ帝国の国教になったことで中世哲学はキリスト教とともに発展していくという流れができあがります。

教父アウグスティヌス

このころの哲学は教父哲学(きょうふてつがく)と言われていて、アウグスティヌスという哲学者が最も有名です。この人だけとりあえず押さえておけば十分です。彼はキリスト教の布教活動をする中で修道院の原型を作り仲間たちと共同生活をおくります。そこでかれはリーダー的な存在だったことから「教父」と呼ばれ、この時代の哲学を教父哲学と呼ぶようになっています。

彼は論争にあけくれる日々を送ります。彼は「神のあわれみ」を重視していて、すべてのものは神のあわれみによって救われるということを説いていきます。「告白」「三位一体論」「自由意志論」などの本を書いたことでも有名な彼はまさにキリスト教の布教とともに哲学をしていた人物ということができます。

アウグスティヌスで一つ覚えておくとすれば「時間論」です。

時間というのは過去→現在→未来と流れていると考えている人が大半だと思いますが、アウグスティヌスの考え方ではとにかく「現在しかない」という考え方をします。過去を思い出しているのも現在ですし、未来のことを想像しているのも現在なので、すべては現在を起点としているということを考えました。

今を大切にして集中しよう」という考えの起点となった考え方ですし、今でも多くの著名な経営者や宗教家も今を大切にすることを説いていますし、禅の世界でも「今」に集中すべきということを教えとして伝えていますので、この時代に既にこういった考え方があったということになります。

■ 中期:スコラ哲学と普遍論争

中期はだいたい12世紀から14世紀頃の時代で、今でいう大学にあたるのかもしれませんが、修道院付属の学校などの教育施設をスコラと呼び、そこでの講義などで語られた哲学をスコラ哲学を読んでいます。

何か一つスコラ哲学として大きな主張があるわけではありませんが、「普遍論争」というのがキーワードです。神の中にある普遍的な概念だけが存在するという実念論と、個々のモノゴトだけが存在するという唯名論が「そもそも普遍的なものは存在するのか」ということについてはげしく議論を戦わせたのが普遍論争と言われています。

この時代の主な哲学者はこの普遍論争を仲直りさせて統合したアベラール、統合されたあとに唯名炉音を復活させたスコトゥスとオッカム、実念論を復活させたトマス・アクィナスの4人が代表的な登場人物です。このスコラ哲学については次回の記事で少し内容を書いてみたいと思います。

■ 後期:ドイツの神秘主義

中世の最後はドイツの神秘主義に触れて終わりです。

ローマ帝国とともにキリスト教が国教として存在していたわけですが、それに対して新たな論理を展開するのが神秘主義で教会からすると異端的な存在です。

エックハルトは人と神が教会の仲介なしに直接一緒になれるということを主張し、クザーヌスも東西教会の統一活動に勢力を上げるなど神秘主義的な哲学を説いた人物です。

■ さいごに

以上が簡単な中世哲学の流れになります。

時代が長いわりに登場人物も少なめですし、キリスト教が中心にあるので神にフォーカスされた時代だということで結構シンプルなのではないでしょうか。

初期のキリスト教と教父哲学についてはこの記事で説明したので終わりにして、次回は中期のスコラ哲学に触れたあとに神秘主義を少し解説して中世哲学は終わりにしたいと思います。中世がおわるといよいよ近代哲学、ルネサンス時代に入っていくので、有名な哲学者が色々と出てくることになります。

それではまた次回。